2021/06/16 05:42

和食の道具として、食べるにも調理するにも必要なものといえば、「箸」です。

古代、日本人は手食で食べていましたが、天皇が神事を行う際、神へ食べ物を捧げるのに直に手で触れないようにするために、最初の箸が登場したと言われています。それは折箸で、トングのような形状でした。神と人をつなぐ道具として誕生した箸を食事に使い始めたのは、遣隋使小野妹子一行が持ち帰った箸を、朝廷の供宴に採用した聖徳太子とされています。その中国では、食事は箸だけでなく、汁物を食べる際などにレンゲを用います。韓国やアジアの国々をみても匙を併用し、箸のみで食事をする作法が確立しているのは、日本だけのようです。

夫婦箸のように、家庭では家族ひとり一人が自分専用の箸を使い、取り皿に取る取り箸と食べ箸を分けて使用しますが、これも日本独特の習慣と言われています。調理の箸も、炒め物に使う菜箸や盛り付けに使う真魚箸など、日本では作業ごとに箸の種類が分かれています。天ぷら店では、衣が剥がれにくい直径1センチ程の太い箸と、揚げる際に焦げない金属製の揚げ箸と分けて使います。繊細な日本料理が生みだされてきた背景には、箸の存在も大きかったのかも知れません。料理店で出される箸では、吉野杉で作った両端の細い利休箸で、割り箸ではないバラのものが高級とされています。